以前投稿した【やりたいことがわからない人の職業の選び方】というタイトルで、農業について触れました。
実際に農業技術を学んで、いざ農業を始める人がまず頭に浮かぶもののひとつは「農地をどうするか」になりますよね。方法として、ざっくり以下の4つになります。
- 買う(農地の売買)
- 無償でもらう(贈与)
- 借りる(農地の賃貸借等)
- 親元の農地を承継する(相続)
農業をする人が、現在農地を所有する人から「買う」・「もらう」・「借りる」・「相続する」とき、両者にはどういう手続が必要なのでしょうか。
御存知の方もおられると思いますが、農地に関しては農地法やその他の法律で保護されています。ここでは農地法を根拠とした手続と注意点を解説します。(法律上の正確性より、わかりやすさを優先した表現となっています)
農地法3条に基づく手続
農地の権利移転を伴う行為には、あらかじめ農業委員会や行政庁の「許可」又は「届出」が必要になり、許可が必要な場合に許可が下りないとその売買や賃貸借等の契約が無効となります。
無効になりますと、最初から契約が成立していないことになります。農地の権利関係は元のままですので注意が必要です。このあたりが他の土地の売買や賃貸等とは大きく違います。
農地の「売買」・「贈与」について
①農地面積を確認する
- このことは、農地を買う側・借りる側の従前の耕作面積と、今回購入する農地面積の合計が、定められた下限面積以上になることが、許可を受ける条件の一つにもなります。(農業をする本気度を見られているようです。下限面積は農業委員会に確認しましょう)
- 法務局の登記簿謄本や市役所などの農業基本台帳で確認できます。
- 隣地との境界があいまいな場合は専門家(土地家屋調査士)に相談しましょう。
②農地がある地域(市町村)の農業委員会に対して許可申請書や添付書類を提出します。
- 申請書の記入欄には、権利を取得する人(農地の買い手、借り手等)については特に詳細な記入事項があります。例:農地の対価・賃料、確保している農機具、従事者についてなど
- 申請書は両者が連署します
- 申請書の書き方や必要な添付書類については農業委員会で教えてくれます。
- 申請に手数料はかかりませんが、添付書類の取得に数千円程度必要です。
申請書の記入欄をみると、申請手続をする際には契約内容や就農計画などがある程度固まっている必要がありますので、早目に申請書を手に入れ記入事項を確認し、農業委員会に相談されることが時間ロスのないスムースな申請と許可につながります。
➂農業委員会の審査後、許可・不許可。
- 許可を受けられる時期に関しましては書類の提出時期にもよりますので、事前に確認が必要です。(1カ月~2カ月程度)
※住所と農地間の距離によっては許可は下りません。この距離は「効率的に農業を営む」ことができるかどうかの判断材料のひとつです。
農地の「賃貸借等」について
- 基本的に売買や贈与と同様です。
- 転貸借はできません(農地のまた貸し・借り)※小作地の転貸の禁止
農地の「相続」について
- 権利の取得ではありますが、「許可」ではなく「届出」となります。
- 相続する人が、農地がある地域の農業委員会に届出書を提出します。
- 届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合は、罰則があります。
ここで少し、「許可(申請)」と「届出」の違いを説明しますと、前者の場合は書類の記載事項に間違いがなくても審査された結果、許可が下りないこともあります。
後者の場合は、書類の記載事項に間違いがなければ、通知するだけで足ります。もちろん間違いがあれば指摘され修正する必要があります。
手続後に権利を得た場合、必ず登記が必要です。
- 専門家(司法書士)に相談・依頼しましょう。
農地法での手続を、おもいっきりシンプルに解説してきましたが、実際に自分で手続をするとなると手間と時間がかかります。
農業委員会との折衝や、書類の収集に関しても役所等の開庁時間に行わなければなりませんので行政書士に相談・代理申請を依頼するのも一つの方法です。
追記。
農地の賃貸借等については、上記の方法のほかに「利用権設定」・「農地バンク」という制度を利用することもできます。
「農地バンク」については、例えば、長年農業を営んできた人が辞める場合に農地を貸したいけれども、貸す相手のあてがない場合や農地を相続する人がそもそも農業をするつもりがない場合など特に有効です。
「利用権設定」・「農地バンク」については別の機会にいたします。