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農地の手続【4条許可】行政書士の簡単解説 ②

農業従事者の高齢化・後継者不足によって、休耕地・耕作放棄地となっているところを見かけることも少なくないと思います。

また日本では圧倒的に小規模農家が多いことに起因し、農地の集積化がなかなか進んでいません。休耕地等が点々と散らばっていることは、土地の有効活用の面からみても社会的損失は大きいと思います。

しかし、農地は食料自給率などの向上を図る目的で法律により守られていますので、農地の所有者でも好き勝手に埋め立てて家を建てたり、駐車場などにすることはできません。

そこで農地法では、一定の要件を満たせば都道府県知事等の許可を受けることにより所有する農地を宅地等にできる場合があります。※(文末に許可不要の場合も記述しております)

また、原則として何の目的もなく「とりあえず許可だけ取っておく」ということはできません。「家を建てるために宅地にする」などが目的です。

それが「農地転用」の許可です。なお権利の移動は伴いません。

 

以下「シンプルかつ分かり易く」を優先して解説したいと思います。

農地法4条に基づく手続【農地転用】

現況が明らかに農地になっている場合はもちろんですが、長い間耕作されている様子がなく、ただの空き地に見える場合でも底地(地目)が農地であれば手続が必要です。「ここが農地とは知らなかった」では済みません。(背景にもよりますが

逆に、地目が農地以外の地目になっていても、現況が農地であれば農地転用の手続きが必要です。

地目とは不動産登記法で決められている土地の種類のこと(用途区分)。農地を地目で表すと「田」・「畑」となります。法務局で確認できます。

また、農地は立地によって規制の厳しさが異なります。

つまり農地がどこに位置して、周囲がどのような状況なのかによって5つに区分されており、属する区分によっては門前払いとなります。これを見過ごしますと時間をかけて書類を作成しても徒労に終わってしまいます。

したがって、まずは対象農地の立地を調べましょう。

1.立地の調査

区分 許可・不許可の別 例外の有無と許可の難易度
農用地区地域内農地 原則不許可 例外は有ありますが超難関
第一種農地 原則不許可 例外は有りますが難関
甲種農地 原則不許可 例外は有りますが難関
第二種農地 場合によって許可 代替地がない場合に許可される
第三種農地 原則許可 許可され易い
  • 上記の区分を確認できる厳密な窓口については、自治体によって部署名が変わりますので、まずは農業委員会に尋ねます。
  • 農業委員会に足を運ぶ際には、あらかじめ法務局で土地の登記簿謄本や公図の取得をお勧めします。具体性があり担当者も判断しやすくなります。
  • 原則不許可である農地についても、転用する目的等によって例外はありますので、担当部署に詳細な説明を受けましょう。

広い農地一筆のうち、一部分を宅地などにしたい場合、土地家屋調査士に相談の上「分筆登記」、あるいは、登記官が職権で分筆登記をすることもありますので、そのときは地目変更の前に「分筆登記の申請」をしなければなりません。

2.申請書の作成と添付書類の収集

  • 「転用事業(土地の造成や建築など)が確実に行われること」や、「周辺農地に支障を生じさせないこと」が申請書等で読み取られます。

(一時的に転用する場合は、後に確実に農地に復元できるかどうかも判断されます。)

申請書には、転用計画や資金調達計画についての記入欄もあり、転用許可後の計画をある程度、算段している必要があります。

  • 申請書の書き方や必要な添付書類については農業委員会で教えてくれます。
  • 隣地承諾書や農家組合長の誓約書など自己で完結できない書類もあり、収集に時間がかかります。

住宅などを建築する場合は、都市計画法や建築基準法など他法令が関わってくることがあります。農地転用の許可が下りても、他法令で許可が必要だったり建築が制限されることもありますので、あらかじめ地域に詳しい建築士や役所などに確認しましょう。

3.農業委員会への提出

  • 提出先は農業委員会です。月に1回農業委員会の総会が開催され内容を検討されます。
  • 申請に手数料はかかりませんが、添付書類の取得に数千円程度必要です。

書類の提出は、総会前に締切日が設定されていますので、締切日までに提出しましょう。それを過ぎると1カ月先送りされてしまいます。また総会は、時期によって2カ月に1回のときもありますので、提出までのスケジュールを立てることをお勧めします。

4.都道府県知事等が、許可・不許可を判断します

  • 農業委員会は意見を付し、都道府県知事等に送付します。
  • 都道府県知事等で審議及び協議され、申請者に許可通知が送付されます。
  • 許可が下りる時期に関しましては書類の提出時期にもよりますので、事前に確認が必要です。(1カ月~2カ月程度)
  • 許可後、地目変更を土地家屋調査士に依頼する必要があります。
  • その土地を担保にローンを組む場合は、地目変更後、司法書士に抵当権設定登記を依頼する必要があります。

都道府県知事等:都道府県知事、農林水産大臣が指定する市町村の長

手続は以上です。

許可不要の場合

農地転用の「届出」ー農地が市街化区域にある場合

「許可」ではなく「届出」となります。

  • 届出は 許可・不許可が判断されるものではなく、届出書等の書類を間違いなく記入、提出するだけですので、許可の申請に比べ手続きが容易です。
  • 役所の都市計画課で市街化区域か否かおしえてくれます。
  • 農業委員会で必要書類を確認し、届出書に記入の上提出します。

 

非農地証明の取得ー地目が田・畑・牧場でも昔から建築物がある場合

農業委員会が農地法上の農地に該当するか否かを判断し非農地として証明するものです。

  • 一般的に、農地法が適用される前から実質的に農地ではなかったと認められる場合です。
  • 地域の農業委員会によって判断が異なりますので、まずは尋ねてみましょう。
  • 農業委員会で必要書類を確認し、証明願に記入の上提出します。

終わりに・・・

農地のある場所によっては、「許可」を得るためにかなりの労力と時間を費やします。「手続は自分で」と思っても、「許可される自信がない」又は「時間がない」ときは、精通した行政書士に相談及び代理申請を依頼されることをお勧めいたします。

 

 

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