今回は、農地等を活用した地域の支援活動についてです。
NPO法人の活動内容は20種類に大別され、その一つに「農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動」があります。
2012年4月の法改正で新設され、過疎化防止、村おこし・町おこし、地産地消をテーマにした活動がメインとなります。
その活動内容は、第一次産業である農業、漁業からアプローチする活動が多くみられます。
このような民間の活動はNPOに限ったことではなく、他に「大学・教育機関」、「企業等」も同様の活動をしているところがあります。
「農地等を活用した取組事例」では詳細が解りますので、こちらを参照しながら、彼らの活動内容から考えられる効果等を探ってみたいと思います。
気楽な感じで記述していますので、とりとめのない話になったり、脱線もするかと思いますが、この投稿を読んでくださる方には、単なる雑談だと思って貰えれば丁度よいかと思います。
Contents
活動目的
NPO法人の活動目的
直接的に農地等を管理・保全し、地域の環境や農業を次世代へ承継しようとする目的が多くみられます。
また、イベントの開催などで、農家と非農家、あるいは、その地域と周辺地域の交流を促し、地域の活性化や食や農に対する意識の向上も目的としています。
地域の環境や景観を地域住民みずから守る意識を向上させるには、実際に保護活動に参加し農家と交流する事が、「最も直接的に作用する」と考えられているのだと思います。
非農家である住民が、農地の保護活動やイベントに参加することで、農家との交流が進み、「地元に対する意識」や「農業に対する考え方」が変わることが期待され、都市部への人の流出幅が減少する事につながります。
また、都市との交流や農業の6次産業化を推進し、都市部からの人の流入や、特産物の販路開拓・拡大により、地域や地場産業の活性化を図っているところもあります。
地域の継続的な発展には、特に農業等の6次産業化は必須です。
大学や教育機関の活動目的
その多くは、主に体験学修を通じた学生などの教育、農業者の育成となっています。
体験学修の一環としては、農作業を含む地域行事の参加、地域の農業従事者と住民間・地方と都市間の交流イベント企画・運営を行い、また、学生だけではなく農業従事者の意識改革を目的としているところがあります。
交流イベントなどの活動により、「お互いを知ること」は、「地域の活性化に必要なこと」との見方ではないかと考えられます。
地方や農村側では、「生まれたときからその地域に住んでいて、周りの環境が当たり前のようにそこにあるため、それが財産だと気づかない」という事が大きくあるのだと思います。
つまり、都市や街の住民の目を通すことで地元の魅力を再発見でき、「今そこにある資源を有効活用できる」と気づく事が出来るのではないでしょうか。
また、イベントに参加した都市に住む人には、「初めての農業体験で感動!」という人達だけでなく、「本来自分が暮らしたい町や村がある」と知る人も中にはいるのだと思います。
教育目的と言えば、NPO法人の活動目的でもありましたが、「食育」があります。
なじみのある言葉で、広く周知されているのですが、私にはあまり関心がありませんでした。
そんなことは個人的なことで、廻りに何か影響を与えるものではないと思っていたからです。
しかし、田舎にあこがれを持つ都会人がイベントなどに参加したとして、そこのスタッフや住人の方が、表情が暗かったり、顔色が悪かったり、体が弱そうだったら、早く帰りたくなりますよね。
魅力ある地域であるためには、先ずその住民が、活き々としていなければなりません。
それには子供の頃からの食育は、やはり大切なのだと思いはじめました。
食育については令和2年度食育白書(令和3年5月28日閣議決定)の普及啓発資料を参照してみてください。
内閣府の世論調査では、都市住民の農山漁村地域への定住願望が、2005年調査に比べ2014年調査では、30代の農山漁村への定住願望が17.0%から32.7%へ、40代では15.9%から35.0%へと伸びています
従来から自然に囲まれて生活したいという願望がある人の他にも、実際に、農業体験を通じて田舎に移り住んで農業を始める人や、コロナ禍のリモートワークにより都会から離れて地方で仕事をする人もいるようです。
企業等の場合
CSR(企業の社会的責任)の一環として、また、社員の研修・福利厚生の場として活用することを目的としているところもあります。
ただ、やはりその場合でも、農家の作業を手伝ったり、「地域のイベントに参加」又は「独自のイベントを開催」すること等で地域の活性化に寄与しています。
一昔前は、休耕地やその他の土地を開発して、レジャー施設を建設することで人を集め、地域の経済効果上げることを目的としていました。
一時的なものとなる事も多々あり、苦しくも運営会社が破綻して廃墟となったコンクリートの塊が日本全国に点在しています。
余談ですが、近年の地球温暖化にしても、温室効果ガスの排出量だけが原因ではなく、そうした目先の便利さや利益を追いかけ、土をアスファルトやコンクリートで覆ってきた事も関係があると思います。
特に夏場はその照り返しによって、天気予報発表の気温よりかなり高いはずです。
私が子供の頃は、扇風機だけでひと夏やり過ごせたのですが、今ではエアコンがないと家の中で熱中症を患うほどです。
(地球温暖化との因果関係については、詳しくはわかりませんので、この辺にしておきます)
以上のことから、NPO法人、大学・教育機関、企業等それぞれの目的の行き着く先は、遊休農地・耕作放棄地、里山を利用した「地域の健全な活性化」となります。
それでは、企業や団体は具体的にどういう取り組みをして成果を出しているのでしょうか
取組と成果について
株式会社クボタ(大阪市)の場合
- 活動概要:
2008~2013 年の 6 年間で全国 33 道県 で耕作放棄地再生支援活動および児童の農育体験指導を実施- 取組内容:
・地域からの要請に基づき、支援テーマとしての選考基準を満たした内容に対して、その地域を担当するディーラー社員が主体的に支援作業を請け負っている。
・耕作放棄地再生および児童の農育体験の支援先は、2008 年は新聞広告/HP などで公募、2009 年以降は県および県農業会議などから推薦を受けて選定。
・耕作放棄地再生支援として、延べ 100 の支援テーマを実行し約 160haの再生に協力
・児童の農業体験支援につき、2008~2013 年で約 5500 名の児童が参加。- 成果:
当社の耕作放棄地支援が地域の放棄地再生構想具体化のきっかけになったこと、また、再生の取組が地域のモデルとして注目を浴びているなど、喜びの声が多く寄せられている。
株式会社クボタは、農業機械の製造・販売する企業で、もともと農業との関係性が深いこともありますが、その規模・広告力・スピードは、さすがに日本を代表する企業といえます。
また、地域からの要請にたいして「地域を担当するディーラー社員が主体的に支援作業を請け負っている」ため、地域との密着度が高くその実情に即した支援が期待できます。
ただ、「支援テーマとしての選考基準を満たした内容に対して」というところが気になります。
やはり企業ならではといったところでしょうか。
NPO法人 愛のまちエコ倶楽部(滋賀県 )の場合
- 取組内容:
滋賀県東近江市愛東地域で菜の花プロジェクトの活動の他、地域活性化を目指した農業体験、里山保全活動を実践している。
ホームページなどを通じて、イベントの参加者・イベントのボランティアスタッフ・農地整備のボランティアを募集しており、農業体験イベントでは、沢山の体験者を迎えている- 成果:
・高齢で思うように体が動かなくなった梨農家から依頼を受けて、収穫・出荷の代行作業も実施。
その作業が評価され、なし園の後継団体として指名を受ける。
全国的にも珍しい「プロの指導を受けながら運営するシロウト集団(愛エコ梨倶楽部)」が来年度から、地域2番目の農地規模となり、地域梨栽培に取ってなくてはならない団体となりつつある。
地域住人によるこのような活動は、特産物やその地域自体に対する愛着が伺え、土地の特性を理解しているからこそできる「特産物の保護」、「農業従事者への配慮」など、小回りが利く細やかな活動ができているのだと思います。
また、この団体では、他のボランティア団体と連携することで着々と成果を出しているようです。
きっと、そのような活動の過程で、「地域のコミュニティーが活性化」したり、「新たな地域の問題点を発見」したりといったように、思わぬ副産物を得ることもあるのでしょう。
こういう地道な活動が実を結ぶ事例を見るとほっとさせられます。
農地の機能
ここに挙げた企業やNPO法人の他にも「農地等を活用した取組事例」では多数の取り組みが紹介されています。
これらの事例から「NPO法人」、「大学・教育機関」、「企業等」には、共通した活動内容もありますが、それぞれの属性に応じた特徴があることがうかがえます。
それぞれの特徴を一言で表すと、NPO法人の「細やかさ」、大学など教育機関の「次世代への教育」、企業等の「機動力」となるでしょう。
また、これらの事例から農地の利活用面で表すと、「交流の場」、「教育の場」、「収益の場」と言える事が出来るのではないでしょうか。
一般的なイメージでは、「作物を育てるところ」と一括りになりがちですが、このような活動を通して見ると、農地を農地として利用する場合でも多機能な面が内在する事がわかります。
会社などの職場でも同様のことが言えますが、こちらは人の制限がありませんし、最終目的が「利益の追求」ではなく「地域の健全な活性化」です。
「地域の健全な活性化」であれば、「本来自治体等が主導すべきなのでは」と思いますが、縦割り事務であることや財政難から身動き取れない状態なのでしょうか。
こうした農地の機能を引き出すことは、新しい農地の活用方法だと考えられますがいかがでしょうか。
課題とその解決に向けて
農地等を活用した以上のような取組には多くの課題があります。
・耕作放棄地・休耕地を再生する手間
・集落単位でできないこと
・イベント参加者の交通手段の確保
・行政との連携
・ボランティア等の受入態勢の確保
・ボランティアや参加者の継続性
・活動の継続性・・・・・・・・・等々
「NPO法人」、「大学・教育機関」、「企業等」が単独で活動していると、各々の制限があるため、こうした課題が残るものと考えられます。
しかし、それぞれの特徴を生かして協働することができるのなら、課題の解決が進むこととになります。
それには、各々の間を取り持つ「コーディネーター」的な役割を担うところが必要となってきます。
そのコーディネーターと成りえるのは行政や「農地バンク」です。
特に農地バンクには農地利用最適化推進委員が配置されており、農地集積化・集約化のコーディネートをしています。
農地バンクの役割を農地の集積化・集約化に留めておくのは非常にもったいないことです。
ぜひ、「NPO法人」、「大学・教育機関」、「企業等」などの外部の意見を取り入れ、地域活性化支援を念頭に農地の活用を進めてもらいたいものです。