2019年に「動物の愛護及び管理に関する法律」が改正され、マイクロチップの装着が義務化されました。
とは言っても、令和4年6月から販売される犬や猫等が対象ですので、現在飼われている犬や猫に関しては「必ず装着」ということではなく努力義務となっています。
マイクロチップを装着することで、迷子や地震、事故などで飼い主さんと離れ離れになったペットが保護された場合、すぐに身元確認ができるという大きなメリットがあります。
欧米では早くからマイクロチップの利用が広まっており、国によってはペットを飼う上での義務となっているところもあるようです。
日本では東日本大震災以降、注目は集まっているのですが、装着率は、犬:9%・猫:2%程度となっています。
しかし、今回のマイクロチップの義務化を契機に装着・利用が広がっていくものと思われます。
「これからペットを飼いたい」若しくは、「うちの子にも装着しよう」と考えている方達にとってはその利用法を理解しておくことは必須です。
また、さまざまな場面で、どの様な手続きが必要になるのかも知っておきたいところです。
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マイクロチップの利用の流れ
一般的な利用の流れとしましては、まず動物病院にマイクロチップを装着したい旨を伝えて申し込みます。
その際マイクロチップリーダーと呼ばれるチップの読み取り機が設置されているかも念のため確認しておいたほうがいいでしょう。
マイクロチップリーダー(読み取り機)を備えている場所ですが、一部の動物病院と保健所、動物愛護センターなどです。
獣医師は、マイクロチップを首の後ろ(背側頚部)に皮下注射で埋め込みます。(この装着は、必ず獣医師が行います)
マイクロチップは、直径2㎜、長さ約8~12㎜の円筒形の電子標識器具で15桁の番号(個体識別番号)が記録されています。これは、一生交換する必要はありません。
次に、マイクロチップを犬や猫に装着しただけでは、誰が飼い主(飼育者)なのか分かりませんので、飼い主の情報を登録する手続が必要です。
動物病院に備え付けの登録申込書にマイクロチップの番号と飼い主の名前、住所、連絡先などを記入の上提出します。
登録申込書は複写式になっていますので、「獣医師控え」と「飼育者控」はそれぞれが保管します。
日本獣医師会の事務局は、データを「動物ID普及推進会議(AIPO)」のデータベースに登録します。
参考:AIPOとは
日本獣医師会で登録申込書を受領してから2~3週間で登録が完了し、飼い主にデータ登録完了通知書(ハガキ)が届きます。
この「登録完了通知書」は、「飼育者控」とともに保管し、家族全員が保管場所を知っておくことが大切です。
費用は、マイクロチップの装着に数千円から1万円程と登録料が1050円になります。
この登録は「狂犬病予防法」による登録とは本来別のものですが、「狂犬病予防法」に基づく市町村への登録のワンストップ化により、マイクロチップを装着した犬の情報が指定登録機関に登録されると、指定登録機関から市町村へ登録情報が通知され、狂犬病予防法における「鑑札」の代わりとみなされます。
「狂犬病予防法」による犬の飼い主の義務、
犬の所有者は、犬を取得した日(生後90日以内の犬を取得した場合にあっては、生後90日を経過した日)から30日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地を管轄する市町村長(特別区にあっては、区長。以下同じ。)を経て犬の登録を申請しなければなりません。
犬の登録が終わると「鑑札」が交付されますので、飼い犬の首輪または胴輪に付けることが必要です。
実際にペットが迷子になったり、逃走した場合は、「公益社団法人日本獣医師会 (mc@nichiju.or.jp)」に届け出ておきます。
警察署や保健所・動物愛護センターは、拾得者からの連絡や保護した場合に、その動物の体内に装着したマイクロチップの番号をリーダーで読み取ります。
警察署や保健所・動物愛護センターは、指定登録機関(公益社団法人日本獣医師会)に照会することによって、即座に飼育者の電話番号等の検索が可能ですので、飼育者に連絡をとることができます。
なお、マイクロチップに”GPS”機能はついていません。
マイクロチップの登録変更など
今回のマイクロチップ装着の義務化で、どういう手続が必要になるのかを見ていきたいと思います。
ペットショップ等(第一種動物取扱業者)から購入する場合
今回(2019年)の改正でマイクロチップ装着が義務づけられるのは、犬や猫の販売業者やブリーダーです。
購入後、飼い主とペットショップ等は マイクロチップの番号と【所有者の登録変更】を行うことになります。
実質的には、ペットショップ等が代行して手続をしてくれます。
譲渡会などで譲り受ける場合
自治体が行っている収容動物の譲渡会等では、マイクロチップが装着済みとなっており、又、既に去勢・避妊等を含めた手数料も新設されています
。
引き取り後の遵守事項として、「飼い主がマイクロチップの番号等の【登録】(所有者の変更登録)を行うこと」が明記されていますので、登録案内に従い手続をしましょう。
県の施設は、譲渡後の飼養管理状況等を調査しており、飼い主はこれに協力しなければなりません。
なお、調査で不適正な飼養が確認された場合には、センターの助言を参考に飼養改善をすることになります。
民間団体の譲渡会や個人からの譲渡の場合
譲渡元の対応は様々ですので、マイクロチップ装着の有無を確認しておきましょう。
譲渡後に装着する場合は、獣医師に装着してもらい、その後【登録】をします(義務)。
また、すでに装着されている場合は、【所有者の登録変更】をすることになります。(義務)
ペットと海外に旅行する場合
動物輸入検疫制度により、ペットの場合、海外を往来するには各種証明書と事前にマイクロチップの装着が必要です。
装着するマイクロチップは、国際標準化機構(ISO)11784及び11785に適合する必要があります。
自治体の譲渡会や、ペットショップ等で令和4年6月以降に購入する犬・猫には、既にマイクロチップが装着されていますので、動物検疫所で対応できる規格のものなのか確認しておくことも必要になるでしょう。
動物検疫所が対応していないマイクロチップだと、「読取機を持参」ということも考えられます。
かかりつけの動物病院に相談又は獣医師会のホームページなどで規格を確認しておきましょう。
所有者情報が変更になった場合
マイクロチップの識別番号は、飼い主の名前、住所、連絡先などの登録データと紐づいています。
それらの飼い主の情報が変更となった場合は【変更登録】を行います。
結婚や引っ越しなどで、名前や住所・連絡先などが変更になる場合等です。
データ登録してある飼い主が、「動物病院経由」あるいは「直接」日本獣医師会にデータの変更を申請します。
所有者を変更したい場合
「飼い主が急な事故などで亡くなり、引き取った犬や猫にマイクロチップが装着されていた場合」・「保護団体から引き取った犬や猫に、マイクロチップが装着されていた場合」は、どうでしょうか。
新しい飼い主が、即【変更登録】することはできません。また、所有者情報は、獣医師会や一部の機関しか確認できません。
獣医師に依頼する場合でも、原則、新しい飼い主の方からの変更依頼ではなく,前の飼い主(現在登録してある飼い主)の方からの依頼若しくは意思の確認をした後に変更手続となります。
「元の飼い主が存在しない」或いは、「元の飼い主が所有者の変更に応じるか不安」という場合でも、獣医師や日本獣医師会 に詳細な事情を説明すれば、事務局が飼い主さんに連絡して仲介してくれることもあります。
(公益社団法人日本獣医師会 マイクロチップデータ登録窓口(mc@nichiju.or.jp))
自ら犬や猫を保護した場合
「家の近くで保護した後、そのまま飼うことになり、しばらくして動物病院等でマクロチップが入っていることがわかった」というときはどいう対応が必要なのでしょうか。
私個人の見解になりますが、獣医師等に所有者情報を照会してもらい、「元の所有者に返還」又は、「獣医師に照合してもらった上【所有者の登録変更】すること」が、道義的にも最もよい対応なのではないかと思います。
また一般論では、法律上は犬・猫をはじめとするペットは「物」として扱われていることから、まず保護した時に警察に遺失物として届け出が必要です。
そのうえで所有者が判明しない場合は、拾得者がその物の所有権を得ることになります。
また、保護した犬や猫が、マイクロチップが装着されていても飼い主登録がされていない場合もありえます。
譲渡証明書もマイクロチップ登録証もないまま、そのマイクロチップの識別番号で登録者変更をしたいのであれば、まず、獣医師に相談してみましょう。
或いは、動物病院でマイクロチップの識別番号を読み取ってもらい、日本獣医師会 に経緯を伝えて登録者変更について問い合わせてみるのもいいでしょう。
ペットが死亡した場合
「市役所の生活環境課等に提出する死亡届(死亡から30日以内)」とは別に、マイクロチップに紐づいた登録データを削除する必要があります。
データ登録してある飼い主が、「動物病院経由」あるいは「直接」、日本獣医師会にデータの削除を申請します。
自宅で死亡した場合の確認方法
呼吸停止の確認・・・お腹の動きなどを見て呼吸の有無を確認します。
心肺、脈の停止の確認・・・ペットの胸のあたりに手を当てて鼓動の有無を確認します。
対光反射の消失・・・ペットの目に光をあてて瞳の反応の有無を確認します。
また、ペットの火葬は、犬や猫の場合は市区町村の担当部署に届け出る事で引取りを行ってくれる場合があります。
それまでドライアイスや保冷剤を使って安置してあげましょう。
マイクロチップ登録変更の方法
譲渡元や動物病院経由で登録内容の変更や削除を行う場合は、その方法を案内してくれますが、飼い主が直接変更や削除を申請する場合もあると思いますので、以下に記述しておきます。(手数料は不要です)
まず、動物病院でマイクロチップを装着した時の「飼育者控」又は、飼い主情報登録後の「登録完了通知書」を用意します。
マイクロチップ登録申請システムを利用する場合
Web上にある公益社団法人日本獣医師会のマイクロチップ登録申請システムにアクセスして、画面に従い登録情報などを入力し、ハガキ(宛名面の方)など上記資料のいずれかの写真を添付して変更が完了します。
郵送やファックスで手続する場合
- コピーした「飼い主控え」の左上の区分「変更・削除」の該当箇所に○印をつけ,「変更箇所を二重線で消す」などし,変更内容を明記したものを,郵送又はFAXにて日本獣医師会の登録担当者(窓口)宛に送ります。
- 『登録完了通知ハガキ』をコピーしたものを使用して手続きをする場合は、コピーしたその余白に変更事項を明記したものを,郵送又はFAXにて日本獣医師会の登録担当者(窓口)宛に送ります。
「データ登録完了通知書」もしくは「飼育者控」を両方とも紛失した場合
登録申請システムを利用する場合は、住民票などの身分証明書の画像を添付でも手続できます。
それ以外は、直接、電話で日本獣医師会の登録担当者(窓口)に連絡します。
そのうえで指示に従い、必要な手続きを行います。
なお、「飼育者に変更があった場合」には、新しい飼育者に「データ登録完了通知書(ハガキ)」を郵送されますが。その他の変更については変更完了の通知はされません。
確認したい場合は、手続して2週間程あとに電話やメールで連絡を取る必要があります。
問い合わせ先:AIPO事務局
〒107-0062 東京都港区南青山1-1-1西館23F
公益社団法人 日本獣医師会(マイクロチップ専用窓口)
TEL:03-3475-1695 FAX 03-3475-1697 Email: mc@nichiju.or.jp
受付時間:9:00~17:30(土・日・祝休)
終わりに
今回の法改正では、【マイクロチップの装着】に関して、ペットショップ等の事業者にその装着が「義務」となり、飼い主には「努力義務」となっています。
しかし、マイクロチップがあらかじめ装着されている犬や猫を飼う場合、飼い主は、所有者情報などを【登録】する「義務」があります。
とはいえ、その飼い主の義務を履行していないからと言って罰則などがあるわけではありません。
私が犬を飼っていた頃も、一週間ほど行方不明になっていたことがあります。
当時はマイクロチップがなかったので、首輪に名前と住所を書いた札を下げていただけでした。
あちこち探した結果、運よく探し出すことができたのですが、見つけたときの姿が泥だらけで少し小さくなったように見えました。遠目では他の犬だと思えるほどです。
ためしに名前を呼んでみたのが幸いして、むこうから駆け寄ってきました。
きっと我が家を探し回っていたのだと思います。
飼い主の不注意で一番辛い思いをするのは犬や猫たちです。
もし探しだせずに、殺処分されてしまったらと考えると、飼い主にとっても、その痛みは罰則を受けることの比ではありません。
災害など多発している今の状況をみると、家の中で飼っているからと安心せずに、もしもの時に備えることが必要です。
マイクロチップを装着することが、今のところ努力義務となっていても、大切な家族の一員を守るために、飼い主がするべきことなのだと思います。