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企業がSDGsに取り組む理由【ESG】

SDGs

「SDGs」という言葉。最近では多くの人に認知されています。

地球温暖化による広範囲な影響をはじめ、洪水や地震等の災害、環境汚染、人権や福祉の社会問題など、地球規模の課題が山積みの状況です。

コロナ禍ということもあり、わたしたち一人一人がそれらに向き合うことが増えていることでしょう。

また、国際社会では、国連という場を最大限活用することで、主要課題としてこれらを解決していく必要があります。

それらの課題に対処すべく、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、通称SDGs(Sustainable Development Goals)は、17の目標を掲げて2030年までの達成をめざします。

メディアでも頻繁に取り上げられ、今では多くの企業が、それぞれの特徴をもとにSDGsの各目標に取り組んでいます。
どういう経緯があり、また、どの様な理由や思惑があるのか企業を取り巻く環境から、探ってみたいと思います。

日本の立場

国連

国連は北朝鮮問題等、日本の安全保障にとって重大な問題についても、重要な役割を担っています。
国連は幅広い諸国が加盟しているという普遍性と、幅広い専門性に基づく正統性という強みを持っています。日本はこの強みを最大限に活用することで、一国では実現できない政策目標を実現することができます。
日本自身、持続可能な成長のためには、これら諸課題に取り組む国連と連携して安定した国際環境の創出は不可欠です。

国連のこのような取り組みを受け、国は環境問題や社会問題の解決のため法令等を整備することにより、企業が事業活動を行う際の様々な規制を設けています。
もとより、企業としてもこれまでのような事業活動では、さらなる気候変動や環境破壊を招き、社会福祉に無関心でいては人材も獲得しにくいため、企業活動に多大な影響を及ぼします。

消費者の動向

ミニマリスト

私達個人においても、それらの災害や、最近のコロナ禍で浮かび上がる貧困問題などを目の当たりにする中で、将来に不安を抱く人が多くなり、SDGsへの関心が高まっています。

商品選択にあたっても、環境問題や社会問題への意識の高まりから、「価格」・「機能・品質」に次いで「環境に良い」などを重視し始めています。

それにより、企業の環境への取り組みに対して、「その企業の製品やサービスを優先して購入する」ことにつながります。

また、最小限のモノしか持たない「ミニマリスト」の増加や「フリーマーケット・アプリ」の利用者拡大などから、市場構造自体が変化しているようです。

これまでの大量消費を前提とした利潤のみを追求するような経営は、もはや時代遅れとなりました。

投資家の目線

投資家

国連が2015年に定めたSDGsより前に、ESG投資を行う投資家が増加しています。

2006年、当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が発表した「責任投資原則(PRI)」の中で、【投資判断の新たな観点】としてESGが紹介されました。
その目的は、投資家の投資判断の基準を変えることにより、「民間の力(投資家のお金)を動かし、企業に変革を促すことで、環境問題・社会問題を解決すること」です。
機関投資家をはじめとするステークホルダー(利害関係者)は、ESGを重要視するようになり、PRIに署名しています。
PRI署名機関数の推移はこちら

また、日本の年金基金である「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」も、2015年9月にPRIに署名し、2017年には約1兆円規模でESG投資をスタートしました。

責任投資原則(PRI)とは、2006年当時の国際連合事務総長であるコフィー・アナンが金融業界に対して提唱したイニシアティブである。機関投資家の意思決定プロセスにESG課題(Environment, Social and Governance; 環境/社会/企業統治)を受託者責任の範囲内で反映させるべきとした世界共通のガイドライン的な性格を持つ。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

PRIの6つの原則
1.投資分析と意思決定のプロセスにESGの視点を組み入れる
2.株式の所有方針と所有監修にESGの視点を組み入れる
3.投資対象に対し、ESGに関する情報開示を求める
4.資産運用業界において本原則が広まるよう、働きかけを行う
5.本原則の実施効果を高めるために協働する
6.本原則に関する活動状況や進捗状況を報告する
経済産業省ーESG投資より

企業のESGへの取り組み

ソーラーパネル

企業価値を高める手段として、財務諸表には表れない無形資産、特に企業ブランドも企業価値を構成する要素として取り入れることの重要性は認識されてはいました。
しかし、当時から環境問題や社会問題に取り組んでいる企業はあったものの、財政的な問題により、本腰を入れるのが難しい状況でした。

ESGは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をとっています。

ESGの具体的な取り組み例

  • Environment(環境)
    再生可能エネルギーの利用
    二酸化炭素の排出削減
    産業廃棄物の処理・浄化・削減
  • Social(社会)
    労働環境の改善
    人権問題への配慮(仕入先、供給元、納品業者などに対して)
    女性の活躍推進・ハラスメント防止への取り組み
    個人情報の保護・管理
    地域社会への貢献活動など
  • Governance(企業統治)
    適切な情報開示
    社外取締役の設置・独立性
    資本効率への高い意識など

以上までを見ると、「ESG」は「SDGs」と似た意味を持つ言葉ですが、「ESGは主に投資家が取り組むもの」、「SDGs」は「政府や行政も含めた日本全体で取り組むもの」と言えます。
しかし、2015年以降、SDGsが採択されたことがESGを後押しする形となり、両者は深く関連しています。
日本でもESG投資が急速に増加し、現在では、「企業の長期的な成長のためにはESGに取り組むことが重要」との考えが広まりました。

中小企業にも求められるSDGs・ESGへの取り組み

ESGへの取り組むことで、お金儲けの仕組みだけでなく、「社会的な価値をも創造している会社であること」が企業が社会から得られる、ブランド・イメージといえます。
そして、これは一部の上場企業が投資家を呼び込むための「ブランディング」に限ったことでもないようです。

銀行や投資家からの資金調達に関して

上場している都市銀行や地銀においてもPRIに署名した投資家から評価されますので、
銀行自体が企業に融資する際に、その企業が非上場であっても非財務情報の開示を促し、対応できなければ条件が厳しくなることも予想されます。

新規取引先の獲得・大手取引先との取引存続に関して

PRIに署名した投資家からは、サプライチェーン管理も評価されます。上場企業が自社に対するESG評価を上げるため、取引先などのサプライヤーである中小企業に対しても、仕様変更を依頼してきたり、新たな開発を依頼する、という動きがみられます。

従業員が働くモチベーションの向上・維持に関して

「自分の働きが社会に役立っている!」従業員にそう感じてもらうことは、本人の働くモチベーションにもつながります。
人材を獲得するうえでも、「社会的な価値を創造できる」というブランディングは大切です。

このように見ると、中小企業にとっては「存続のための取り組み」と思われるかもしれません。
ただ、捉え方・取り組み方一つで、単なるコストとなるか成長の足掛かりとなるかは中小企業の経営者次第となります。

また、将来の自分達の会社が「どうありたいか」、「どうなっていたいか」という目標から逆算して、どのような道筋でそれに取り組むのかの意思表示するをことが重要です。
なぜなら、ESG投資家が求めているのは、再エネ100%にすぐにでも切り替えることなどではなく、「移行していくことの明示」だからです。

地域脱炭素ロードマップ

脱炭素計画

21年6月、「地域脱炭素ロードマップ」が内閣府から発表されました。

「本ロードマップは、地域課題を解決し、地域の魅力と質を向上させる地方創生に資する脱炭素に国全体で取り組み、さらに世界へと広げるために、特に 2030 年までに集中して行う取組・施策を中心に、地域の成長戦略ともなる地域脱炭素の行程と具体策を示すものである。」 内閣府 地域脱炭素ロードマップ より

地方自治体や地元企業・金融機関が中心となり、環境省を中心に国も積極的に支援しなが
ら、30年までに少なくとも100カ所の脱炭素先行地域を創出する目標が掲げられています。:内閣府 地域脱炭素ロードマップ より
内閣官房HP 地域脱酸素ロードマップ

地域脱炭素は、地域の成長戦略でもあるため、地域や自治体、地銀などの強い関心を集めることでしょう。

このロードマップでは、「再生エネルギー利用に関しては、中小企業が個別に考えて解決する」というよりは、「契約先や自治体などのパートナーと一緒に考えて解決していく」となっています。
既に、ESGに取り組む企業を対象に、3億円を上限として金利を優遇する商品を展開している地方銀行もあります。
自治体では、再エネエリアを作って地産エネルギー活用に取り組んでいるところもあります。

とはいえ、ESGやSDGs経営のストーリーは自ら描かなければなりません。
「そうは言っても自社が何をしたらいいのか分からない」ということもあると思います。
しかし、自社が、現在の事業がSDGsのどの目標に当てはまるかを考え、次に社会が今、何を求めているかを考えてみるとハードルが低くなり、自社の成長にもつながります。
大事なのは意思表示をすることです。

例えば、飲食店の場合「飲食店での食べ残しの持ち帰り」をしてもらうだけでも、発生する食品廃棄物は減少し、処分に使うエネルギー消費を抑制できます。

地元の自然資源を生かして食料・木材等を賄うことは、輸送にかかる CO2を減らし、地域産業を支える事にもつながります。
また、森林や里地里山を手入れしながら、木材や自然資源(バイオマス)として活用することも考えられます。

なお、SDGsの17の目標別に、参画し得る各分野と市場規模の試算が示されていますので、これに当てはめれば、より具体的な計画を描けると思います。

SDGsの各目標の市場規模試算結果(2017年):三菱UFJリサーチ&コンサルティングの資料より

終わりに

SDGsに取り組む意思

私たちのような個人事業者(行政書士)は、もともと地域密着型ですので事業を継続していくために、社会貢献のもとにブランディングしているところも多くあります。
我々のような行政書士を利用して、「取引銀行から御社のESG情報(非財務情報)を開示して欲しいと要求された」となる前に、早目のサポートを受けて道筋を描くのもよいでしょう。

これからはブランディングを向上させたりする際は、ESGは欠かせなくなるのかもしれません。

しかし、小規模事業者にとっては、ESGやSDGs経営を始めるにあたって、やはり初期コストがかかる等の面でハードルがあります。
真面目にコツコツと事業を営んでいても、従業員の給料の支払いで精一杯というところもあると思います。

将来、ESG情報(非財務情報)の開示ができないからと言って、それによって銀行や行政などから不利益な扱いを受けていては、SDGsの「誰一人とりこぼさない」の趣旨に反して、とりこぼしてしまいます。

自分たちの商品・サービスや技術自体が社会貢献に値するという自負があれば、さらにそれを磨き、また、できる範囲内で地域貢献できることを探すことでもよいのではないかと思います。
要するに、SDGsに参加する意思が大事なのですから。

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